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#002【解体×組織論】浜松・静岡の企業が変わる鍵「エンゲージメントを高めるリーダーシップ」とは?

なぜ今、組織の「解体」が必要なのか?

静岡県浜松市やその周辺で働く皆さん、こんな“モヤモヤ”を感じていませんか?
・「上司の言葉が“昔はこうだった”ばかりで、今の現場に合っていないと感じる」
・「会社の方針に納得できないけど、言えない・言ってもムダ」
・「転職も考えているけど、結局どこの企業も同じような気がする」

このような悩みの背景には、組織の“構造疲労”が潜んでいるかもしれません。建物が老朽化すれば「解体」が必要なように、企業も時に「組織の見直し=解体」が求められます。

筆者は就職活動中の子供に「面接の最後に『何か質問は?』と聞かれたら、『社長さんはどんな方ですか?』と聞いてみな。尊敬していないことが丸わかりで言葉を濁したら、その会社は辞めておけ。」と伝えています。それほど社長が会社の組織風土へ及ぼす影響力は絶大です。人事部門や社員ひとりひとりがどんなに組織風土を良くしようと思っても、社長が全能感全開で独善的な経営をしたら、サラリーマンという生物はあっという間にそのバイアスに飲み込まれていきます。
更に筆者は、昨年秋に丸友開発にJOINした決め手は、現社長との面談での会話の中で、現社長がイノベーションを起こし得る組織風土づくりが出来る人だと感じたからで、毎日気持ちが良い就業生活を送るために、組織風土には相当な拘りを持っています。

本記事では、浜松・静岡エリアの企業文化を背景に、「雇われ社長」と「創業社長」の違いを組織論から分析し、従業員エンゲージメントを高めるためのヒントをお届けします。

雇われ社長 vs 創業社長(創業家社長含む):組織論から見るリーダーシップの違いとその功罪

浜松地域には創業家で経営のバトンが繋がれている企業が多く見受けられます。前回のブログでも述べた通り、浜松はスズキ・ヤマハ発動機・ホンダの発祥の地、トヨタはおとなり湖西市が発祥の地です。本田宗一郎らの有名な創業者と苦楽を共にしてオートバイや自動車を作り上げた部品メーカーの創業者の家系で経営を受け継ぎ、完成車メーカーと共に発展を遂げている企業が少なくありません。

一方、浜松はその他の産業が育ち難いとも言われ(そのことについてはまたいつか述べるとします)、そのような淘汰が激しい浜松地域の様々な業種において、1代で会社を立派にされた創業社長が浜松には大勢いらっしゃいます。

建設業界はといえば、社名に苗字が入った企業が多いことからわかる通り、創業家で経営を受け継ぐケースが多いように思います。

創業社長は地元の盟主と言われる方も多く、地域とのつながりを大切にされる傾向が強く、トップのリーダーシップがそのまま企業文化に直結するケースが多く見られます。

ここでは、企業の「顔」となる社長のタイプを「雇われ社長」と「創業社長」との2つに分けて考察します。

最初にお断りをしておきますが、かなり振り切った記述をしています。最終的には社長個々人の特性なので、後述する雇われ社長のような創業社長もいますし、その逆もしかり。あくまで経営トップのマネジメントスタイルの特徴をご理解していただき易くするために、二極化した表現で記載していることをあらかじめご了承ください。

雇われ社長とは?

雇われ社長は、株主や取締役会によって任命される創業家とは無関係の社長。内部昇格が多いが、近年は外部から経営のプロが招聘されることも。ガバナンス重視の経営スタイルが特徴。

メリット

・客観的な判断ができる
・専門性が高い
・組織の制度やルールを重視

デメリット

・株主に選ばれた度合いに比例して、株主意向への服従度が高くならざるを得ない
・任期中の結果や評価を追い短期志向になりやすい
・組織文化の継承は薄くなりやすい
・カリスマ創業者的な牽引力が生まれ難い

創業社長・創業家社長とは?強みと落とし穴

創業社長は企業をゼロから立ち上げた人物。創業家社長はその子孫や親族が経営を引き継いだケース。創業者の理念が企業の「顔」となりやすく、従業員の行動規範に強く影響する。

メリット

・長期的なビジョンが持ち易い
・カリスマ的な牽引力が生まれ易い
・即決即断し易い
・組織文化を形成し易い

デメリット(リスク構造)

・長期政権になり易く、各種デメリットも長期化
・幹部が迎合し組織が硬直し易い(長期政権なら逆らわないことが得策)
・「イエスマン」が増殖し「裸の王様」になり易い
・(そうなると)従業員に「何を言ってもムダ」と“あきらめ”が蔓延し易い(エンゲージメント低下)
・有用な情報が入りづらくなり適切な意思決定や経営判断が困難になる

このように、トップの意向が絶対視されると、幹部が意見を言いづらくなり、現場との乖離が進みます。結果として、従業員のエンゲージメントが低下し、組織の活力が失われていきます。

浜松・静岡の企業事例:成功と失敗の分かれ道

前述のメリットとデメリットとを十分認識され、「雇われ社長」と「創業社長」双方のメリットを相乗させるトップマネジメントをされ成功されている企業と、デメリットを地で行く企業とで明暗が分かれています。

成功事例:老舗物流業A社(浜松市)

浜松市に本社を構える老舗物流企業A社では、創業100年を超える歴史を持ちながらも、若手社員を中心としたプロジェクトチームを立ち上げ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進。創業家社長のトップダウンではなく、社員参加型の変革を実現されています。
・若手社員が10年後のビジョンを描く
・顧客アンケートや現場ヒアリングを通じて課題を抽出
・新システム導入により生産性30%向上
・社員の「自分ごと化」によるエンゲージメント向上


成功事例:スプリング製造業B社(浜松市)

創業60年のばね専門メーカーで創業家親子が会長・社長。「人を大切にする経営」を実践することで、社員の心理的安全性とエンゲージメントを高いレベルで両立されている。

1. 心理的安全性を育む文化的土壌
・若手社員が部署を超えて活躍できるプロジェクト体制を整え、年齢や役職に関係なく意見を出し合える風土を醸成。
・「会社イメージソング」制作プロジェクトでは、社員の声をもとに歌詞が作られ、全社的な一体感と自己表現の場の創出。
・経営層が現場の声に耳を傾ける姿勢で「異論を歓迎する文化」が根付いている。「社員の声を経営に活かす」ことで、社員の会社への信頼と愛着が高まっている。

2. エンゲージメントを高める仕組みと実践
・社員が「自分ごと」として会社の未来を考えられるような仕組みが整っている。
・経営理念の共有と浸透:理念や価値観を明文化し、日常業務の中で繰り返し共有。

これらが成果として表れている証拠
・「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞 中小企業庁長官賞受賞:社員・顧客・地域社会を大切にする経営姿勢が高く評価。
・KAIKA大賞受賞:組織の内発的成長と社会価値創出の両立が評価され、社員の誇りとモチベーション向上に寄与。
・健康経営優良法人の連続認定:心身の健康を経営の柱とし、働きやすさと働きがいの両立を実現。
・顧客の多角化、製品用途の多角化、BtoC事業開始、BCP整備などが進んでいる

単なる制度やイベントにとどまらず、日々のコミュニケーションと信頼関係の積み重ねによって支えられおり、社員が「安心して挑戦できる」環境があるからこそ、自発的な改善提案や新しいアイデアが生まれている。


失敗事例:自動車部品製造業C社(静岡県西部)

一方、静岡県西部の自動車部品製造業C社では、創業家の社長がワンマン経営を続け、自分の意見に同調しない役員や社員と距離を置き、同調する社員を重宝した結果、意見が言えない空気・言ってもムダというあきらめが蔓延。
イエスマンばかりが残り、現場の声が届かない“静かな崩壊”が進行。
役員の大半が心の中で反対している筋の悪い新規事業等の議案が賛成多数での可決が連続、日の目を見ない研究開発費が膨らんでいった。
またモラルが低下し、重大品質問題が連発し、企業価値を大きく損ねる事態となり、組織の再建が必要となった。

心理的安全性とは?4つの要素で読み解く

心理的安全性(Psychological Safety)とは、「この職場では自分の意見を言っても否定されたり、罰せられたりしない」という信頼感のことです。Googleが社内の実証実験で、チームのパフォーマンスを高める最重要要素と位置づけられた概念としても有名です。

心理的安全性には、以下の4つの要素があるとされています:

1. 話しかけやすさ
上司や同僚に気軽に話しかけられる雰囲気があるかどうか。これがないと、些細な疑問や不安が放置され、ミスや誤解につながります。

2. 助けを求めやすさ
困ったときに「助けて」と言える文化があるか。助けを求めることが弱さではなく、協力の一環として認識されているかが重要です。

3. ミスをしても責められない
失敗を学びの機会と捉える文化があるか。ミスを責める文化では、誰も挑戦しなくなります。

4. 異なる意見=異見を歓迎する
立場や年齢に関係なく、異なる視点を歓迎する姿勢があるか。これがないと、組織は硬直し、創造性が失われます。

心理的安全性とエンゲージメントを両立させるには?

企業において「心理的安全性」と「従業員エンゲージメント」を両立させるためには、創業者の情熱 × 雇われ社長の制度的公正さを融合しつつ、以下のような多層的なアプローチが効果的です。これは単なる制度設計だけでなく、リーダーシップのあり方や組織文化の醸成にも深く関わります。

両立のための5つの得策

1. 「話せる」文化をつくる:心理的安全性の土台
・1on1ミーティングやオープンなフィードバック文化を導入
・上司が「聞く姿勢」を見せることで、部下が安心して意見を言えるようにする
・例:補助機能としてSlackやTeamsで「意見箱チャンネル」を設ける

2. 「共感できる」ビジョンを共有する:エンゲージメントの源泉
・経営理念やビジョンを、定期的に社員と共有・再定義する
・例:全社ミーティングで経営理念と仕事とを照合しつつ語る場を設ける

3. 「挑戦できる」環境を整える:両立の架け橋
・ミスを責めず、学びに変える文化を育てる
・例:失敗事例共有会や「チャレンジ賞」などの制度を導入

4. 「認め合う」評価制度を導入する
・成果だけでなく、プロセスやチーム貢献も評価
・例:360度評価、ピアボーナス制度(同僚からの称賛)

5. 縦社会に過度に最適化された組織を「解体」し、「支え合う」チームをビルディングする
・ツリー型の組織図を解体したり、階層を減らし組織権限を見直す
・「管理職」という呼び方を「支援職」などに変え、意味なく「偉い人」を無くす
・チームビルディングや心理的安全性の研修を実施
・例:心理的安全性の4要素(話しかけやすさ、ヘルプの求めやすさ、失敗からの学びの称賛、異なる意見の歓迎)を可視化し、定期的に振り返る

補足:心理的安全性とエンゲージメントの関係

心理的安全性が低い心理的安全性が高い
意見が言えない、萎縮自由に発言できる、安心
挑戦を避ける挑戦を歓迎する
表面的な関係信頼関係が深い
エンゲージメントが低下エンゲージメントが向上

静岡県内の企業の施策事例:心理的安全性とエンゲージメントの両立

某鉄道事業会社
取り組み名:「みんなの100日プロジェクト(100プロ)」
背景:
• コロナ禍で社内の人間関係が希薄化
• 若手社員の離職率が高く、定着率に課題
主な施策:
• 社内の仲間図鑑:社員のプロフィールを社内で共有し、相互理解を促進
• ランチセッション:部門長が部署の仕事や人柄を語るライブ配信
• 部署横断のプロジェクトチーム:若手社員が中心となって課題解決に挑戦
成果:
• 離職率が1年で90%減少
• 部署間の壁が低くなり、社員同士の信頼関係が向上
• 若手社員の発言機会が増え、エンゲージメントが高まった


某住宅・建設事業者
課題:
現場が受け身で、意見やアイデアが出にくい
施策:
• 感謝文化の導入(感謝を伝えるカードやメッセージ)
• タスクチーム制度で現場主導の改善活動を推進
成果:
• 社員同士のコミュニケーションが活性化
• 自発的な挑戦が増え、現場の活力が向上


某大手製薬会社の静岡工場
課題:
• 組織が大きく、理念が浸透しにくい
• 若手社員の離職率が高い
施策:
• ピアボーナス制度(社員同士が感謝を送り合う)
• 世代や部署を超えた交流イベントを定期開催
成果:
• 若手社員の定着率が改善
• 組織全体に「認め合う文化」が根付き、心理的安全性が向上


これらの事例に共通するポイントは:
• 社員同士の「つながり」を可視化・強化
• 上司が「話しかけやすい存在」になる工夫
• 若手や現場の声を経営に反映する仕組み

まとめ:従業員の声が届く、経営トップと従業員とが近距離の組織こそが強い

・心理的安全性とエンゲージメントが高い組織が、真の価値を合理的に生み出す生産性の高い組織と言える。
・そのような企業では次々とイノベーションが生まれ、真の企業価値を高めている。
・浜松・静岡にもそのような企業が多く存在し、絵空事ではなく、手が届く現実である。
・経営トップのリーダーシップは、組織風土を形づくる最大の要因ではある。
・しかし、側近や幹部の迎合が社長を「裸の王様」にし、組織全体に“あきらめ”が蔓延するリスクを高めることを意識する必要がある。
・心理的安全性とエンゲージメントの両立は、リーダーが自らのスタイルを客観的に見つめ直し、柔軟に変化していく姿勢こそが、従業員の信頼を生み、強い組織をつくる鍵となる。

・側近・幹部・社員も組織風土形成に大きく影響することを知る必要がある。
特に2人目・3人目のフォロワーシップが、リーダーシップを生かすことに絶大な影響力があるかを示すYouTube動画を紹介したい。

【浜松・静岡の企業の皆さまへ】「物理的な解体」も「組織の解体」に貢献出来ます。

私たちは、「組織の解体」から始まるエンゲージメント改革に貢献出来ます。
レガシーな組織の多くは、縦社会に最適化されています。
豊富な知識と経験の年長者の意見こそが正解、経験が浅い若年層や専門外の社員は黙っていろというバイアスの中で、冒頭に記した“モヤモヤ”を抱えながら就業生活を送っている方も少なくないと思います。
あなたは、縦型組織の部署毎に分かれた小部屋で、小さな村社会の論理の中で仕事をしていませんか?
物理的にも部署間の壁が存在せず、組織横断でのコミュニケーションを交わしながら仕事をしませんか? いまは、協力会社の社員まで出入り自由といったオープンスペースも増えています。
我々丸友開発は、「組織の解体」から始まるエンゲージメント改革に貢献出来ます。物理的な壁の解体だけでなく、我々は不動産事業も行っているため、オープンスペースへの移転、旧オフィスのニーズの探索・売却・利活用などのご用命も承ります。

浜松・静岡で働く皆さんが、もっと前向きに、もっと自分らしく働ける職場づくりを目指して。
“解体”は壊すことではなく、“未来を創る第一歩”です。

筆者紹介:風を読む人事家(火曜日・金曜日ブログ担当)
異業種で人事・総務の世界に身を投じて30年。社員の幸福感・血の通った組織・業績と経営へのインパクトに拘って、あらゆる人事・組織の理論と実践を行き来しながら、組織という名の“生き物”と格闘してきた。建設業に飛び込んで半年。今日も人と組織の“幸福感”を観察中。
週末のライフワークである人事・組織理論の読書の傍らでブログを書き溜めて火曜日・金曜日に予約配信中。
建設業のリアルな現場でも実践し得られたことの共有や、人事・総務の視点から、世の中の矛盾や不条理を鋭く、時に皮肉を交えて切り取ります。
業種を問わずさまざまな企業の中で「なんとなくモヤモヤしている」「組織の中で立ち止まっている」そんなあなたの思考に一石を投じるヒントがここにあるかもしれません。