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#018 サザエさん症候群にはルパン三世が効く——「燃えているか?」が人生を変える

日曜日の夕方、テレビから流れる『サザエさん』のエンディングテーマ。あの陽気なメロディが、なぜか胸を締めつける。明日からまた仕事が始まる——そんな憂鬱な気持ちが押し寄せる瞬間。いわゆる「サザエさん症候群」だ。

私にとっての幸せのバロメーターのひとつとして、この症状が出るかどうかがある。月曜日の足取りが重く、金曜日の夜が一番幸せ(昭和では“華金”という)に感じるような時期が、人生の所々に確かに存在する。そして、そんな時期は決まって「仕事が楽しくない」と感じていた。

私はこの状態が嫌いだ。何といっても苦痛だ。今回は、いつも幸せであろうとする私なりの、その状態にならない回避方法について記事にまとめたいと思う。

「ルパンは燃えているか」——個が燃える時代の象徴

『ルパン三世』の第一話「ルパンは燃えているか」。このタイトルは、現代の働き方にも通じる問いだ。

組織がどうかではなく、「あなた自身は燃えているか?」が問われている。今、必要なのは「個」として夢中になれるテーマ。その没頭力こそが、創造性・突破力・影響力の源泉となる。

このエピソードでルパンは、例によって、峰不二子との駆け引き、銭形警部との攻防、そして自ら仕掛けた罠に夢中になる。彼は常に「自分がやりたいこと」に没頭している。その姿は、まさにゾーン(集中の極限状態)に入った人間そのものだ。

ルパンは、組織に縛られず、誰にも命令されず、ただ「自分の欲望」と「美学」に従って動いている。その自由さと集中力が、彼を“燃える個”にしている。

サザエさん症候群を超える「Work as Life」の考え方

「仕事が楽しい」と感じるとき、私はサザエさん症候群を感じない。むしろ、新たな週が待ち遠しい。そんな状態になると、土日も平日の夜も、トップギアで走り続けているわけではないが、常にローギアが入った状態で、心は仕事とつながっている。

例えば、街を歩いていて目に入る看板、メディアで流れてくる情報、友人との会話、カフェで読んだ本——それらすべてがマーケティングになりビジネスのヒントに変わる。アイデアがどんどん湧いてくる。仕事が楽しいと、日常のすべてがインプットになり、創造の源になる。

「Work as Life」、仕事と人生を分けるのではなく、仕事を人生や生活の一部として捉える。いや、むしろ境界がわからないほど溶け込ませてしまう。そうすることで、仕事は苦役ではなく、自己表現の場となる。

副交感神経が優位なとき、アイデアは生まれる

人間の脳は、緊張しているときよりも、リラックスしているときに創造性が高まる。つまり、副交感神経が優位なとき——心身が落ち着いているときに、アイデアは生まれる。これは科学的にも証明されている。

私の場合、それは朝のシャワーを浴びているときだ。心地よい温度と水圧のシャワーが頭皮を打つと、日々インプットして心の引き出しにしまってある情報が、無意識のうちに繋がっていき、ビジネスのアイデアがわいてくる。
さらに、大好きな車の運転をしながら心地よい音楽を聴いていると、会社に着く頃にはそのアイデアが実践的なアクションに昇華していることが多い。

アイデアは、燃えている個だからこそ活かせる。情熱があるからこそ、アイデアを形にする力が湧く。逆に、燃えていない状態では、どんなに良いアイデアも、ただの思いつきで終わってしまう。情熱も行動も伴わない単なる“提言”は、誰の心にも届かず、むしろ「どっから目線なの?」と軽蔑される。「私もそう思っていたんだよね~」なら言わない方がマシだ。

燃える個は、アイデアを生み、形にし、周囲に影響を与える。まさに、創造の連鎖の起点となる存在だ。

どうすればルパンのように没頭できるのか?

ルパンのように「燃える個」になるためには、次のステップが有効だ。

ステップ1:自分の「好き」を見つける
ルパンは「お宝」が大好きだ。あなたは何が好きか?自分のこれまでの人生の物語を読み返し、その物語を彩っている瞬間、自分が何にときめいて、何に“ワクワク”していたかに気づくこと。

ステップ2:スリルを設計する
ルパンはいつもギリギリの状況に身を置く。それが彼の集中力を引き出す。あなたも、少し背伸びした挑戦を設計してみよう。「この案件、ギリギリだけどなんとしてもやってみたい」──そんな状況がゾーンを呼び込む。

ステップ3:仲間との駆け引きを楽しむ
ルパンは次元や五ェ門、そして銭形警部との関係性の中で、常に刺激を受けている。あなたも、信頼できる仲間やライバルとの関係性が、没頭力を高める鍵になる。仲間との相乗はアウトプットをスケールアップし、ライバルとの関係性はパッションの源泉となる。

「燃える個」が組織を変える

ルパン三世のように、個が燃えている状態——それは、単なる自己満足ではない。むしろ、組織にとっても大きな価値を生む。

燃えている個は、自ら考え、動き、創造する。指示を待つのではなく、自分の美学と目的に従って行動する。そんな人が組織に一人でもいれば、周囲は刺激を受け、連鎖的に火が灯る。やがてそれは、組織全体の熱量を高める。

逆に、組織が個を押さえつけ、均質化しようとすると、火は消える。サザエさん症候群が蔓延する。だからこそ、リーダーは「個が燃える環境」を整えることが重要だ。

ルパンは、誰にも命令されず、誰にも媚びず、ただ自分の信念に従って動く。そんな彼の姿は、現代の組織における理想の「自律型人材」の象徴でもある。

「燃える個」は、日常の中にいる

燃える個は、特別な才能を持った人だけではない。むしろ、日常の中にこそ、その火種はある。

例えば、現場で汗を流す職人。彼らは、自分の技術に誇りを持ち、細部にこだわり、完成形を思い描きながら作業している。これはまさに、ルパンが「盗み」を芸術として捉えているのと同じだ。

また、営業の現場で、お客様との会話の中からニーズを掘り起こし、提案を磨き上げる人。彼らもまた、ゾーンに入っている。時間を忘れ、相手の言葉に没頭し、最適解を導き出す。

燃える個は、どこにでもいる。そして、その火を絶やさないためには、「これは俺の芸術だ」と思えるテーマを認識することだ。

燃える個を増やそうとして、撃沈した話

かつて私は、組織の中に「燃える個」を増やそうと何度も試みた。情熱を持ち、没頭できるテーマに向かって走る人が増えれば、組織はもっと面白くなる——そう信じていた。

実際は、燃え上がる人とそうでない人とに二分される。燃え上がる人たちは、会社の仕事と融合する自分の「好き」を見つけ、挑戦を楽しみ、仲間との駆け引きの中で成長していった。彼らのアウトプットは、明らかに違っていた。アイデアの質も、行動のスピードも、周囲への影響力も、すべてが際立っていた。

しかし、燃え上がらない人は決まって「時間外に仕事をさせるのですか?」という反応だった。まるで、情熱を持つことが「労働時間の延長」だと誤解されているようだった。

そんな時、私は決まってこう伝えることにしている。

「週末の読書は仕事ですか?」

読書も、通りすがる街の看板を目にしたときも——それらはすべて、アイデアの種になる。副交感神経が優位な時間、つまりオフタイムこそが、創造の源泉なのに「仕事じゃないから」と思考を止めてしまえば、ひらめきは生まれない。街の看板を見ても、何かを感じることもなくなる。アイデアのひらめきを放棄することになる。

当然、仕事のアウトプットの違いは歴然だ。

燃える個は、オンとオフの境界を柔らかく持ち、日常のすべてを創造のフィールドに変える。だからこそ、彼らは強い。彼らは、ルパンのように「芸術」として仕事に向き合っている。

燃え上がるポイントは、ミッションの重なりにある

燃える個を組織の中に増やそうとする試みや、自分がサザエさん症候群から抜け出そうとする試みの中で、私が痛感したことがある。それは、個人が燃え上がる瞬間は、組織の存在意義とも言えるミッションと、個人がこの世に生まれついた意義ともいうべきミッションとの重なりによって生まれるということだ。

組織のミッションとして、社会にどのような価値を提供しようとしているのかと、個人のミッションとして、自分が仕事を通じてこの世界でどのような持ち味や役割を果たしたいと思っているか、この二つが重なったとき、人は自らの仕事に意味を見出し、情熱を持って取り組むようになる。

それはかなり間接的な影響でも、抽象的な概念でも良い。例えば、我社のミッションが「解体や改修工事で、土地や建物の価値を高めることを通じて、地域社会の発展に貢献する」ことだったとする。そして、ある人材採用を得意とする社員が「自分が生まれ育ち、子孫も育まれていく浜松市を少しでも良い街にしたい」という強い願望を持っていたとする。この場合、我社のミッション達成に寄与する社員を採用していくことで、社業を通じて自分のミッション達成にも寄与出来ることに気づいたなら、個人ミッションと組織ミッションが重なり、その社員はルパンのように燃え上がる。

逆に、ミッションが重ならないとき、人は「やらされ仕事」と感じる。どんなに優れた制度や報酬があっても、心は動き難い。だからこそ、リーダーは「個人のミッションを見つける支援」と「組織のミッションとの接点を設計すること」が求められる。

この重なりこそが、燃える個を生む「火種」なのだ。

個人ミッションの見つけ方——あなたがこの世に生まれた意味を探る

過去の「夢中体験」を振り返る

まずは、これまでの人生で「時間を忘れて没頭した瞬間」を思い出してみて欲しい。

・どんな活動だったか?
・どんな感情が湧いたか?
・その時、何を目指していたか?

この「夢中体験」には、あなたの価値観や情熱の源泉が隠れている。ルパンが盗みに没頭するように、あなたにも「ゾーン」に入っていた瞬間がなかっただろうか。

「怒り」や「違和感」を掘り下げる

意外にも、あなたが強く「怒り」や「違和感」を覚え、使命感がわいた場面にも、ミッションのヒントがある。

・どんな社会の不条理に腹が立ったか?
・どんな職場の風景に違和感を覚えたか?

それは、あなたが「本来こうあるべきだ」と信じている価値観の裏返し。その価値観を守り・広げることが、あなたのミッションかもしれない。

「誰のために、何をしたいか」を言語化する

ミッションとは、単なる「好き」ではなく、「誰かのために、何かをする」ことです。

・あなたが助けたい人は誰ですか?(例:地域の人々、未来の子どもたち、新興国の人々)
・その人に、どんな価値を届けたいですか?(例:安心、安全、希望、学び)

この問いに答えることで、あなたのミッションは社会との接点を持ち始めます。

組織のミッションと照らし合わせる

最後に、あなたの個人ミッションと、今所属している組織のミッションを照らし合わせてみて欲しい。

・共通点はあるか?
・重なる部分はどこか?
・その重なりをどう活かせるか?

この重なりこそが、あなたが「燃え上がるポイント」。ここに火が灯れば、サザエさん症候群は遠ざかり、月曜日が待ち遠しくなるかもしれない。

個人と組織のミッションが重なるとき、社会は動き出す

そして今、私が所属する丸友開発という組織もまた、浜松市という地域社会に根ざしながら、解体という仕事を通じて、街の未来をつくり、そこで暮らす人々のQOL向上のための下支えを続けること——それが丸友開発の存在意義であり、使命と考えている。

そのミッションを達成するために、社員一丸で次のことを追求している。

安全に、環境に配慮し、人にやさしく、合理的な工期をもって、高い工事品質と適正価格で、顧客満足度向上を追求。そのために高い工事技術を探求し、協力会社と共創することに努めること。

そして、それぞれを担う社員たちは、次のようなことを自らの使命と感じて、街の未来に貢献しようとしている。

「現場の安全を守り抜き、地域の信頼を積み重ねる。」

「適法で適正な解体工事と産廃処理を守り切り、地域の環境を守る。」

「人と人との関係性を大切にした現場運営に拘り、施主・顧客・協力会社・職人・近隣住民すべての笑顔を守る。そのためにコミュニケーションと配慮を大切にする。」

「合理的な工期設計で、無駄なく効率的にプロジェクトを進める。お客様の期待を超える納期達成を目指す。」

「高い工事品質を追求し、細部まで妥協しない仕事を積み重ねることで、自分の仕事で街の未来を支える。」

「適正価格で最高の価値を提供し、顧客満足度を最大化する。お客様の声に真摯に向き合い、信頼を築く。」

私は、社員のこれらの使命感を、心から誇りに思う。

これらの個人のミッションが組織のミッションが重なる瞬間、私たちの仕事は、社会を変える力を持っていると実感する。

社員が誇りを持って働き、その姿を家族が微笑ましく見守る。地域の人々が安心し、未来に希望を持てる。そんな風景を、仕事を通じて生み出すことができる。

これは、単なる企業活動ではない。社会貢献そのものだ。

だからこそ、私は「燃える個」を育てたい。組織の中に、ミッションに共鳴する人を増やしたい。そして、丸友開発というフィールドを通じて、社会に火を灯していきたい。

私の個人ミッションのひとつは、我社の仕事を通して、社員とその家族が誇りを持ってイキイキと暮らし「幸せだ」と感じられる組織をつくることにある。そのために、個の持ち味を引き出し、全体主義的な風土に抗いながら、対話とマネジメントを通じて火を灯し続けている。

月曜日は冒険の始まり!目覚めよ!あなたの中のルパン3

「これは俺の仕事じゃない」ではなく、「これは俺の芸術だ」と言えるテーマを見つけたとき、あなたの中に眠っていた情熱が、静かに、そして力強く燃え始める。

その火は、あなた自身を突き動かすだけでなく、周囲にも連鎖していく。
月曜日が、冒険の始まりに変わる。
日曜日の夜が、次のステージへの助走になる。

あなたの中のルパンは、ずっとそこにいる。
今こそ、その扉を開こう。
あなたの人生を、あなたらしく、自由に、情熱的に生きるために。

さあ、問いかけてみよう。
「私は、燃えているか?」

筆者紹介:風を読む人事家
自動車業界で、人事~海外子会社CEO~人事担当役員などを経て当社へ。社員の幸福感・血の通った組織・業績と経営へのインパクトに拘って、あらゆる人事・組織の理論と実践を行き来しながら、組織という名の“生き物”と格闘してきた。フィールドを建設業界に移し、今日も人と組織の“幸福感”を追求中。
週末のライフワークである人事・組織理論の読書の傍らで徒然なるままに書き溜めたブログです。
建設業のリアルな現場でも実践し得られたことの共有や、人事・組織論の視点から、世の中の矛盾や不条理を鋭く、時に皮肉を交えて切り取ります。
業種を問わずさまざまな企業の中で「なんとなくモヤモヤしている」「組織の中で立ち止まっている」そんなあなたの思考に一石を投じるヒントがここにあるかもしれません。
2025年7月より当社代表取締役社長