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#019 アンコンシャスバイアスという現代の呪いを、私はこうして“解体”する

浜松の地で解体業を営む日々の中で、私は気づいた。「壊すべきは、目に見える構造物だけじゃない、人の心の奥深くにも、静かに積み上がった“解体すべきもの”がある。」と。それがこれまでの記事に色濃く反映されている。

今回解体する非構造物は、アンコンシャスバイアス——無意識の偏見。
現代人が知らず知らずのうちに抱え込んでいる“呪い”のようなものだ。

「呪い」とは何か?——現代社会に潜む“見えない鎖”

呪いと聞くと、オカルトやファンタジーを思い浮かべるかもしれない。
でも私が語る呪いは、もっと静かで、もっと身近なものだ。

それは、自分でも気づかないうちに心にかけられた“見えない鎖”。
「こうあるべき」「こうしなきゃ」「これは常識だ」——
そんな“べき論”が、私たちの思考と行動をじわじわと縛っていく。

この呪いは、誰かが意図的にかけるものではない。
社会や組織、家庭、文化の中で、自然と身に纏ってしまう。
そして多くの場合、本人はその存在にすら気づかない。

でも、ふとした瞬間に「なぜこんなに苦しいんだろう」と感じたとき、
その正体こそが、アンコンシャスバイアスという現代の呪いだ。

いつの間にか心に巣食う「現代の呪い」

この呪いは、静かに、じわじわと心に染み込んでいく。
たとえば、

・男なんだから、強くなきゃ
・親なんだから、我慢しなきゃ
・日本人なんだから、空気を読まなきゃ

そんな“べき論”が、自分の中に根を張っていく。
厄介なのは、自分ではなかなか気づけないこと。
誰かに「それ、呪いだよ」と言われても、「いや、これは常識だ」と思い込んでしまう。

でも、ある日ふと気づく。
「なんでこんなに苦しいんだろう」
「なんで、こんなに自分を責めてしまうんだろう」
その違和感の正体が、アンコンシャスバイアスという呪いだった。

呪いに縛られた日々と、私の“解体”の原点

この呪いの存在を強く意識したのは、自動車業界で働いていた頃。
日本を代表する巨大産業の中で、私がいたのは“レガシーな組織風土”。

・上司の言うことは絶対
・前例がすべて
・若手は黙って従え
・失敗は許されない

そんな空気が職場の隅々まで染み渡っていた。
最初は「これが社会人としての常識なんだ」と思い込んでいた私も、次第に違和感を覚えるようになった。

なぜ、自由に発言できないのか。
なぜ、誰も挑戦しようとしないのか。
なぜ、みんな本音を隠して顔色ばかりうかがっているのか。

その答えは、“呪い”だった。
組織全体に染みついたアンコンシャスバイアス。
私もまた、その呪いに縛られ、挑戦を恐れ、「こうあるべき」という鎖にがんじがらめになっていた。

呪いを解く鍵は「フラットな対話」——異業界への転職は最高の処方箋

アンコンシャスバイアスという呪いは、同じ環境に長くいるほど深く根を張る。
だからこそ、呪いを解く鍵は“異なる価値観に触れること”。

私にとって、それは異業界への転職だった。
自動車業界という保守的な世界から、浜松の街で解体業に飛び込んだことで、初めて「自分が呪われていた」ことに気づいた。

異業界には、異なる常識がある。
異なる言葉遣い、判断基準、人間関係の距離感。
それらに触れることで、自分の中の“当たり前”が揺さぶられる。

そして何より、肩書きも年齢も関係なく、フラットな対話ができるようになる。
「人」として向き合い、「今の自分」として話す。
それが、呪いを解く第一歩になる。

ネット社会の「おいしいとこどり」は呪いを助長する

現代社会には、呪いを助長するものがある。
それは、“合わない人を完全にシャットアウトすること”。

SNSでは、気に入らない意見をブロックしたり、ミュートしたり。
Googleではその人の嗜好に合った検索結果を表示し、YouTube動画ではもはや好みに合った動画しか出てこない。

リアルでも、価値観が違う人を避けて、自分と似た人だけで固まる。心が揺れることをする人・言う人を遠ざける。耳ざわりの良いことを言う人を周囲に置く。
それは「おいしいとこどり」の世界。

心地よい情報だけを集めて、都合のいい世界を作る。
でも、それって本当に豊かなのか。
むしろ、違う価値観に触れることで、自分の中の“盲点”に気づけることもある。

呪いを解くには、時に“違和感”を受け入れる勇気も必要になる。

“人の良いところを眺める”という魔法

呪いにかかった世界の中でも、私は“人の良いところに注目する”ことを意識している。
それは、相手の全部を受け入れるのではなく、
「この人のここは面白いな」「この視点は参考になるな」と思える部分を見つけること。

そしてそれは、自分自身にも向けられるべき視点。
悩んでいるとき、自分のダメなところばかり見てしまいがち。
そんなときこそ、自分の「よいとこ」を眺めてみる。

・あのとき、挑戦した自分
・あのとき、誰かのために動けた自分
・あのとき、踏ん張った自分

それは、呪いに抗う魔法のようなものだ。

解体業と呪いの共通点

「壊す」ことは「見つめ直す」ことでもある。
古い建物には、長年の歴史や思い込みが詰まっている。
それを壊すことで、新しい可能性が生まれる。

アンコンシャスバイアスも同じ。
それは、長年積み重ねられた“思い込みの建築物”。
それを壊すことで、自分の本音や本質が見えてくる。

悩みは、人生の“解体ショー”かもしれない。
そしてそのショーは、意外と面白い。

呪いを解体した先に広がる“本来の自分”との再会

呪いを一つひとつ解体していくと、驚くほど自由な世界が広がってくる。
「こうあるべき」という鎖が外れると、自分の本音や本質が、少しずつ顔を出し始める。

異業界に飛び込んだことで、私は初めて「本来の自分」と再会できた。
それは、肩書きや役割に縛られない、もっと素朴で、もっと自由な私という人間。

新しい価値観に触れ、自分の可能性に気づく瞬間

異業界に身を置くことで、私は多様な価値観に触れるようになった。
それは、まるで別の言語を学ぶような体験だった。
見知らぬ価値観に触れるたびに、私の中の“当たり前”が揺さぶられた。
その揺さぶりの中で、「自分にも、まだ知らない可能性がある」と気づいた。

しがらみから解放された後の“軽やかさ”と“前向きな変化”

呪いを解体し、価値観を更新していくと、心が驚くほど軽くなる。

・誰かの期待に応えようとする重圧
・失敗を恐れて動けなくなる不安
・自分を偽って生きる苦しさ

そういった“しがらみ”が少しずつ剥がれ落ちていく。
そしてその軽やかさの中で、人は自然と前向きになる。

やってみよう。
話してみよう。
変わってみよう。
そんな小さな一歩が、新しい自分をつくっていく。

呪いを解体し、自由になる

アンコンシャスバイアスという呪いは、誰もがかかっている。
でも、それに気づき、向き合い、壊していくことで、私たちはもっと自由になれる。

悩むことは、呪いに気づくチャンス。
そしてその悩みの中には、必ず「よいとこ」がある。

今日も私は、悩みながら、呪いを解きながら、街の建物を壊し、自分の思い込みも壊していく。
それが私の仕事であり、私の生き方だ。

あなたの中の呪いも、きっと解体できる

もし今、あなたが何かに悩んでいるなら、それはきっと、あなたの中にある“現代の呪い”が原因かもしれない。

でも大丈夫。
その呪いは、必ず解ける。

まずは、自分の中の“べき論”や“当たり前”を疑ってみてほしい。
そして、フラットな人にフラットに話してみてほしい。
違う価値観に触れてみてほしい。
自分の「よいとこ」を、ちゃんと眺めてみてほしい。

そうやって、少しずつ呪いを解体していけば、新しい景色が、きっと見えてくる。

私は、そんなあなたを応援している。

筆者紹介:風を読む人事家
自動車業界で、人事~海外子会社CEO~人事担当役員などを経て当社へ。社員の幸福感・血の通った組織・業績と経営へのインパクトに拘って、あらゆる人事・組織の理論と実践を行き来しながら、組織という名の“生き物”と格闘してきた。フィールドを建設業界に移し、今日も人と組織の“幸福感”を追求中。
週末のライフワークである人事・組織理論の読書の傍らで徒然なるままに書き溜めたブログです。
建設業のリアルな現場でも実践し得られたことの共有や、人事・組織論の視点から、世の中の矛盾や不条理を鋭く、時に皮肉を交えて切り取ります。
業種を問わずさまざまな企業の中で「なんとなくモヤモヤしている」「組織の中で立ち止まっている」そんなあなたの思考に一石を投じるヒントがここにあるかもしれません。
2025年7月より当社代表取締役社長