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#021“自分らしさ”を解体せよ——真の“幸せ”を生きる旅へ

幸せとは「自分らしく生きること」。それが難しい

「幸せになりたい」——それは誰もが持つ、まっすぐな願い。
でも、幸せって何だろう? お金があれば幸せ? 家族がともに健康ならば? 仕事がうまくいけば? それとも、何か特別なことが起きたときだけ感じるもの?

キャリアコンサルタントや心理学を学びながらこの問いを追求してきたところ、幸せとは「自分らしく生きる」ことという私なりの一定の解に辿り着いた。
しかし、その「自分らしく」が難しい。そもそも「自分らしい」って何だ?どうやって見つけるんだ?
さらには、見つけることを邪魔するもの、見つけても見失わせることなど、自分らしさの追求そのものが宝探しの旅のようなものだ。
いずれにしても、「幸せ」は誰かから与えられるものじゃなくて、自分の中にある“何か”とつながることから始まる旅である。
今日は“自分らしさ”を解体しながら、「幸せになるとは何か」について、少し考えてみたい。

幸せの正体——“自分らしさ”とのつながり

日々、いろんな経験をする。嬉しいこと、悲しいこと、悔しいこと、何でもないこと。そんな経験の中で、「こうありたい」「こんなふうに生きたい」っていう思いが、心のどこかに芽生える。
でも、忙しさに流されて、その“ありたい自分”を忘れてしまうこともある。誰かの期待に応えようとしたり、周りの目を気にしたり、失敗を恐れて自分を押し殺したり。そんなとき、「自分らしさって何だったっけ?」と、ふと立ち止まる瞬間がある。
幸せの第一歩は、この“自分らしさ”ともう一度つながること。
「こうありたい」と思う気持ちを、そっと見つめ直す。たとえば、子どもの頃に夢中になったこと、誰かに褒められて嬉しかった瞬間、悔しくて泣いた夜——そんな経験の中に、今の自分の“根っこ”が隠れている。そんな自分に接続してみよう。

“ありたい自分”を見つける旅

幸せになるには、「ありたい自分」を見つける旅が必要だ。
この旅は、決して楽なものじゃない。迷ったり、立ち止まったり、自分を見失ったりすることもある。
でも、そんなときこそ、「自分はどうありたいのか」「どんな人生を送りたいのか」を問い直すチャンスだ。
「ありたい自分」は、誰かから与えられるものじゃなくて、自分の中にすでにあるもの。
子どもの頃に憧れた人、夢中になったこと、心が震えた瞬間——そうした記憶の中に、今の自分の“根っこ”が隠れている。
この“根っこ”を見つけて、少しずつ育てていくこと。それが、幸せになるための旅の始まりである。

“私はそういう人間ではありません”と言えるか

一方、“悩み”とは、「自分じゃない自分」を演じようとしている苦しさとも言える。
心理学者デイビッド・シーベリーの言葉に、「悩んでいる人は、みんな『私はそういう人間ではありません』と言えなかった人だ」というものがある。
たとえば、自分が“亀”なのに、“ウサギ”のペースで走ろうとする。そして、亀にウサギのように早く走ることを期待する周囲の人がいる。でも亀は、亀のペースでしか歩けない。それなのに、周囲の期待に応えようとして「ウサギにならなきゃ」と思い込んでしまう。
このとき、本当は「私は亀です」と言えばよいのに、でも言えない。だから悩みを生む。
自分が“亀”なのに、“ウサギ”として生きようとする。それが、心の摩擦を生む。
「私はそういう人間ではありません」——この一言を言えるかどうか。
それが、自分自身であることの第一歩になる。

“自分であること”が、人間の唯一の義務

人間の唯一の義務は、自分自身であること。
誰かの期待に応えることでも、誰かの人生を生きることでもない。
自分の人生を、自分のペースで、自分の足で歩くこと。
実はそれが、他人に対して果たすべき最も誠実な義務でもある。
早く走れるウサギがいれば、ゆっくり歩く亀もいる。
木に登れる猿がいれば、水を泳げる魚もいる。
それぞれが、それぞれの持ち味を生きればいい。
でも、世の中には「魚に木登りをさせようとする人」がいる。
そして、魚がその期待に応えようとして苦しむ。
そんなときこそ、「私は魚です」と言えばいい。
それが、自分自身であるということ。それが、幸せの土台になる。

“悩み”は、自分を見失ったサイン

悩みが深くなるとき、そこには必ず「自分じゃない自分」がいる。
誰かの価値観に合わせようとしたり、周囲のペースに無理してついていこうとしたり。
その結果、自分の“根っこ”が見えなくなる。
悩みから抜け出すには、まず「自分にかけられた否定的な暗示」に気づくことだ。
「もっと早く走らなきゃ」「もっと上手くやらなきゃ」「もっと強くならなきゃ」——そんな暗示が、自分を縛っている。
でも、本当は「遅くてもいい」「不器用でもいい」「弱くてもいい」。
それが自分なら、それでいい。
悩みは、自分を見失ったサインだ。
だからこそ、立ち止まって「私はそういう人間ではありません」と言ってみる。
その瞬間から、悩みは少しずつほどけていく。

弱さや失敗など“見たくない自分”も、幸せの糧になる

誰にでも、「見たくない自分」がある。失敗した自分、誰かを傷つけてしまった自分、弱さや不安を抱えた自分。そんな自分を認めるのは、正直つらい。
でも、幸せになるには、この“見たくない自分”とも向き合う勇気が必要だ。そこにこそ、本当の成長の種がある。
たとえば、仕事で大きなミスをして落ち込んだとき。最初は「自分なんてダメだ」と思うかもしれない。でも、時間が経つにつれて、「次はこうしよう」「同じ失敗は繰り返さないようにしよう」と前向きな気持ちが芽生えてくる。
失敗や弱さを受け入れることで、少しずつ“ありたい自分”に近づいていく。
「見たくない自分」を受け入れることは、自分を責めることじゃない。むしろ、「そんな自分も自分なんだ」と認めてあげること。そうすることで、心の中に新しい“つながり”が生まれる。

不幸を受け入れるという強さ

「不幸を受け入れると、することが見えてくる」
これは、弱さを認めることの大切さを教えてくれる。
ピンチになったとき、「なぜこんなにピンチなんだ」と否定するよりも、「このピンチの中でどう生きるか」を考える。
不幸が訪れたとき、「なぜ自分だけ」と嘆くよりも、「この不幸を抱えながら、何ができるか」を探す。
不幸を受け入れることは、負けじゃない。
むしろ、自分の現実を受け止める強さ。
そこから、自分らしい生き方が見えてくる。

幸せは“つながり”の中にある

人は一人では生きていけない。家族、友人、職場の仲間、地域の人たち——いろんな人と関わりながら、日々を過ごしている。
幸せになるには、“人とのつながり”も欠かせない。
でも、ただ誰かと一緒にいるだけじゃ、本当の幸せには届かない。大事なのは、「自分らしさ」を大切にしながら、相手の“らしさ”も認め合うこと。
たとえば、職場で意見がぶつかったとき。「自分の考えを押し通す」のではなく、「相手の考えにも耳を傾ける」。
家族とすれ違ったとき、「自分の気持ちを伝える」と同時に、「相手の気持ちも受け止める」。
そんなふうに、お互いの“らしさ”を尊重し合うことで、心の距離がぐっと近づく。
「共に生きる」という言葉がある。
これは、ただ一緒に過ごすだけじゃなくて、お互いを受け入れ、支え合い、時にはぶつかり合いながらも、最後には「あなたがいてよかった」「自分もここにいていいんだ」と思える“つながり”が幸せを呼び寄せる。

感情は“囚われ”から生まれる

落ち込んだとき、不愉快な気持ちになったとき、私は幸せだ・・・とは思えない。しかし、落ち込んだ気持ちや不愉快なその感情には、実は根拠がないことが多い。
人間の感情は「囚われ」によって生まれる。
たとえば、同じ料理を食べても、好きな人と一緒なら美味しく感じる。嫌いな人と一緒なら味気がない。
つまり、感情は「何を感じたか」ではなく、「どんなコンテキストで感じたか」によって変わるということだ。
ジェットコースターに乗って喜ぶ人もいれば、飛行機の揺れに恐怖を感じる人もいる。刺激は同じでも、感情はまったく違う。
だから、落ち込んだときは「自分の感情は唯一のものではない」と思ってみると良い。
その感情は、過去の記憶や学習によって呼び出された“検索情報”かもしれない。
今の自分が感じているようで、実は昔の自分が感じている。
よって、感情に囚われていると、今を生きることが難しくなる。
だからこそ、「これは過去の囚われかもしれない」と気づくことが、楽に生きる第一歩になる。

“不愉快”も、過去の記憶がつくり出す

人は、自分の感情を「絶対的なもの」だと思いがちである。
でも、実際にはその感情は、過去の記憶や経験に引っ張られている。
たとえば、ある人が高齢者に対してネガティブな印象を持っているとする。
それは、子供の頃に初めて出会った高齢者が、弱っていた姿だったからかもしれない。その印象が、何十年も心に残り続けている。
でも、別の人は、子どもの頃に出会った高齢者が活動的で社会に影響を及ぼしている尊敬できる存在だった。
だから、自分が高齢になっても「自分はいくつになっても活躍しよう」と思える。
感情は、過去の“囚われ”によって形づくられる。
だからこそ、「今の自分が本当にそう感じているのか?」と問い直すことが大切。
不愉快な気持ちも、落ち込む感情も、過去の記憶がつくり出した“幻”かもしれない。

感情は“過程”で変わる

人は、結果だけを見て「悲しい」「怖い」と感じることがある。
でも、感情は「過程」によって変わる。
同じ出来事でも、どんなコンテキストでそれを経験したかによって、感じ方はまったく違う。
だから、感情をコントロールするには、「自分がどんな過程でそれを受け取ったか」を見つめることが大切である。
たとえば、誰かに否定された時。
それが「自分を否定された」と感じるか、「相手の価値観に合わなかっただけ」と受け止めるかで、心の反応は変わる。
感情は、絶対じゃない。
だからこそ、感情に振り回されずに、「今の自分はどんなコンテキストでそれを感じているのか?」と問い直してみる。
それだけで、心は少し軽くなる。

“過去の奴隷”から自由になる

人は、過去の記憶に縛られて生きている。
小さい頃や過去に学習した感情が、大人になってもずっと影響を与えている。
でも、今の自分は、もうその頃の自分じゃない。
体は今にあるのに、心だけが昔に取り残されている。
「過去の奴隷になっている」のだ。
だからこそ、その“囚われ”を断ち切ることが必要だ。
「自分はもう、あの頃の自分じゃない」
そう思えたとき、感情は少しずつ自由になっていく。
そして、自分らしく生きる力が、静かに湧いてくる。

“承認”と“満足”——二つの幸せの柱

幸せには、二つの柱がある。一つは「承認」、もう一つは「満足」。
「承認」は、誰かに認められること。
家族や友人、職場の仲間から「あなたがいてくれて助かった」「ありがとう」と言われると、心がふっと温かくなる。人は誰でも、誰かに受け入れられたい、認められたいという気持ちを持っている。

もう一つの「満足」は、自分自身が「これでいい」と思えること。
誰かに褒められなくても、「よく頑張った」「自分らしくできた」と思える瞬間。これは、他人の評価とは関係なく、自分の中から湧き上がる幸せ。

この二つの柱がバランスよく育まれるとき、本当に幸せを感じられる。
誰かに認められるだけでも、自分だけが満足しているだけでも、どこか物足りなさが残る。
お互いを認め合い、自分らしさも大切にできる——そんな関係性が、幸せの土台になる。

幸せは“経験”とその意味の見出し方にある

人生は、経験の積み重ね。
楽しいことも、苦しいことも、何気ない日常も、すべてが自分の“糧”になる。
たとえば、大学で留年してしまった時、人生で一年遅れを取ってしまったと思うか、人生において有意義な一年を手に入れたと思うかによって、過ごし方は全く変わってくる。
経験に意味を見出す力は、自分自身の中にある。
どんな出来事も、「自分にとってどんな意味があるのか」を考えることで、人生のすべてがつながって感じられるようになる。

“自分を含む世界”と“他人事の世界”

心の中には、「自分を含む世界」と「他人事の世界」がある。
「自分を含む世界」は、自分が関心を持ち、意味を感じる世界。
一方、「他人事の世界」は、関心がない、意味も感じない、自分とは無関係と感じる世界。
でも、時に「他人事の世界」にあった出来事が、「自分を含む世界」に入ってくることがある。そのきっかけは、誰かの何気ないひと言かもしれないし、転勤や人事異動といったライフステージの大きな変化かもしれず、大小さまざまだ。
はじめての経験に、これまで感じたことがない気持ちになる。大切にしてきた考え方や価値観が揺さぶられて、モヤモヤする。
しかし、なぜモヤモヤするのかを考えると、揺さぶられているのはこれまで大切にしてきた自分自身の考え方や価値観だということに気づく。その考え方や価値観の真価が問われてモヤモヤするのだ。
もしその考え方や価値観を進化させることが出来たなら、実は人としての成長に繋がり、世界が少し広がる。自分の中に新しい幸せとの接続が生まれるのだ。

幸せへの道しるべ(全文からのまとめ)

人生は、問いかけと気づきの連続。「幸せになりたい」と願うその気持ちは、誰の心にもあるまっすぐな灯火。
ここに、幸せへの道しるべをまとめます。

1. “自分らしさ”を見つめ直す
子どもの頃に夢中になったこと、心が震えた瞬間——その記憶の中に、自分の“根っこ”がある。
そこに立ち返ることで、幸せの第一歩が始まる。

2. “ありたい自分”を問い続ける
迷いや悩みの中にこそ、「自分はどうありたいのか」という問いがある。
旅の途中で立ち止まりながら、自分の人生を自分の足で歩く覚悟を持つ。

3. “見たくない自分”も受け入れる
失敗や弱さは、成長の種。「そんな自分も自分なんだ」と認めることで、心の中に新しいつながりが生まれる。

4. “私はそういう人間ではありません”と言える勇気を持つ
他人の期待に応えるために、自分を偽る必要はない。
自分のペース、自分のスタイルを大切にすることが、幸せへの誠実な道。

 5. “人とのつながり”を育てる
自分らしさを大切にしながら、相手の“らしさ”も尊重する。
共に生きる関係性の中に、深い幸せが育まれる。

 6. “承認”と“満足”のバランスを意識する
誰かに認められることも、自分自身が納得できることも、どちらも大切。
両方が揃ったとき、心は満たされる。

7. 経験に意味を見出す力を育てる
出来事そのものではなく、「それが自分にとってどんな意味を持つか」を考えることで、人生のすべてがつながっていく。

8. “他人事の世界”に揺さぶられたとき、自分の価値観を見直す
モヤモヤは、自分の価値観に揺さぶりを掛けられているから。価値観を進化させ成長できるチャンス。
自分の世界を広げ、幸せとつながるきっかけとして受け止める。

9. 感情は“文脈”と“過程”で変わることを知る
感情は絶対ではないと心得て惑わされない。感情は過去の囚われや文脈によって形づくられるもの。
だからこそ、「今の自分が本当にそう感じているのか?」と問い直す。

10. “過去の奴隷”から自由になる
今の自分は、もう過去の自分ではない。過去の記憶に縛られず、今ここにある自分として生きることが、幸せへの解放につながる。

最後に——あなたの“幸せ”は、あなたの中にある

幸せは、誰かから与えられるものではない。
それは、自分の“根っこ”とつながり、自分らしく生きることの中に、静かに芽吹いていくもの。
そしてその幸せは、誰かと分かち合うことで、さらに深く、豊かに育っていく。

「幸せになる」って、特別なことが起きることじゃない。
“ありたい自分”とつながり直し、“見たくない自分”も受け入れながら、日々の経験に意味を見出していくこと。
そして、誰かと共に生きる中で、お互いの“らしさ”を認め合い、支え合うこと。
そんな日々の積み重ねが、静かに、でも確かに、幸せの土壌を育んでいく。

もし今、幸せが遠く感じるなら——
目を閉じて、自分自身の両肩を抱きしめて、自分自身に「お疲れさま」と声をかけてみて欲しい。
その一言が、心の奥にある“根っこ”に水を注ぎ、静かに芽吹かせてくれるはず。
そして、ほんの少しだけ、自分の“根っこ”を思い出してみて欲しい。
子どもの頃に夢中になったこと、心が震えた瞬間——その記憶の中に、あなたの“根っこ”がきっとある。
そこに立ち返ることで、幸せの第一歩が始まります。

あなた自身が、あなたらしく生きられますように。

筆者紹介:風を読む人事家
自動車業界で、人事etc.~海外子会社CEO~人事担当役員などを経て当社へ。社員の幸福感と、業績と経営へのインパクトとの両立に拘って、あらゆる人事・組織の理論と実践を行き来しながら、組織という名の“生き物”と格闘してきた。フィールドを建設業界に移し、今日も人と組織の“幸福感”を追求中。
週末のライフワークである人事・組織理論の読書の傍らで徒然なるままに書き溜めたブログです。
建設業のリアルな現場でも実践し得られたことの共有や、人事・組織論の視点から、世の中の矛盾や不条理を鋭く、時に皮肉を交えて切り取ります。
業種を問わずさまざまな企業の中で「なんとなくモヤモヤしている」「組織の中で立ち止まっている」そんなあなたの思考に一石を投じるヒントがここにあるかもしれません。
2025年7月より当社代表取締役社長