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#028 “問い”を携える者が、偶然をチャンスに変える

“問い”が世界の景色を変える

世界は、意識に呼応する。

例えばある車を買おうと思った瞬間から、道行く同じ車種がやたら目に入る。偶然が増えたのではない。自分の認知のピントが合ったのだ。

見えているようで見えていないものは多い。意識の焦点が変わると、世界はヒントで満ちた景色へと様変わりする。

“問い”は、認知のピント合わせの起点だ。問いが立つと、脳は無意識に手掛かりを拾い始める。

今夜一人で夕飯を済ませるとして、「何が食べたい?」と自分の体に問う。すると車窓を過ぎる道々の看板が次々に語りだす。「ラーメン?いや違う」「米は食べたい、なら丼か」。ハンドルは確信へ近づく方角に自然と切られていく。

問いがない世界はノイズだ。問いがある世界はヒントの宝庫である。重要なのは、問いによって偶然が意味を持ち、行動へ接続されることだ。

偶然を“意味”に変える問いの力

人は問いを持つと、答えのヒントを持っていそうな場所や人へ向かう。

影響を受ける人や情報と出会うと、偶然が意味へと変わり、「流れが来たかも」と感じる。

神社に行き、おみくじを引く行為も同様だ。例えば「失せ物:人と会えば出る」とある。問いを携え、心の引き出しに仮説をたくさんしまっている人には、この一文から複数の行動のヒントが降りそそぐ。「そうだ、あの人に会いに行こう」。意味が立ち上がり、一歩が生まれる。

問いがあるかどうか――それが、前に進む人と足踏みする人の分岐点である。

問いは“進化”する

問いは、最初から洗練されている必要はない。生々しい問いから始めて、健やかな問いへ進化させることが良い。

私の場合の変遷を例に挙げる。

はじめの問い――「どうしたら儲かって社員を守れる?」
事業の土台を固めたいという切実さがあった。視線は足元に向いていた。

進化途中の問い――「どうしたらお客さんに喜んでもらえる?」
価値を届けて感謝が循環する仕組みを考え始めた。

成熟中の問い――「どうしたら解体を通して、お客さんの土地や地域の魅力を高められる?」
仕事の意味が広がった。現場は工事ではなく“まちの未来づくり”の一工程だと見えるようになった。

問いを育てる過程で、価値観が定まり、優先順位が整い、行動がクリアになる。会う人も変わる。問いは熱を帯び、やがて使命へと進化する。使命になった問いは、人や機会を勝手に連れてくる――それが「運が良くなった」の正体だ。

“悩み”は『問いの冒険』だ

答えを決められない時間を、私たちは「悩み」と呼びがちだ。しかし実態は、問いと答えの間を行き来しながら未来を探検している時間である。

「辞めるべきか、続けるべきか」「やるべきか、やめるべきか」。この往復運動は、人生のGPSを微調整するプロセスだ。悩みではない。前に進むための作業である。

上質な“問い”を生み出す三つの視点

1, 時間軸を伸ばす
「来月の売上」より、「三年後、どんな価値で選ばれていたいか」へ。長い時間に耐える問いは、短期のノイズに振り回されにくい。

2. 対象を広げる
「私が成功するには」より、「お客さん・仲間・地域・社会が幸せになるには」へ。自分以外を含む問いは、行動の選択肢を豊かにする。

3. 自分の核心に触れる
「なぜそれをやるのか」を何度も自問する。表面的な欲求を、本質的な願いに変換する。問いが変われば、選ぶ行動は自然に変わる。

キャリアを動かす“問い”のテンプレート例

・この役割で、私が最も価値を生みだせることは何か?
・お客さんに「あなたに頼みたい!」と言ってもらうために足りないものは何か?
・一日一日を、忙しさではなく意味と価値で満たすために、やめられることは何か?
・今の仕事を通じて、地域や社会にどんな良い影響を与えたいか
・三年後、どんな価値で人々に乞われる人間でありたいか?

“問い”が未来を創る

本稿の核心はシンプルだ。
問いがあるから必要な人と出会い、問いがあるから答えのヒントが引き寄せられる。人生が躍動し楽しくなる。
そして、“答えを探す”のではなく、上質な“問いを立てる”方が本質的な答えに辿り着く。

今日から――答え探しをやめ、問いを醸成していきたい。
未来から届くヒントが降り積もれば、やがてそれは答えになる。

いま、あなたが心の奥で育てている“問い”は何だろうか?
その問いが、偶然を味方にし、出会いを引き寄せ、未来を形づくる。
まず一つ、たった一歩でいい。その問いが示す行動に歩んでみてほしい。
あなたの次の一歩を、“問い”が必ずまた導くはずだ。

筆者紹介:風を読む人事家
自動車業界で、人事etc.~海外子会社CEO~人事担当役員などを経て当社へ。社員の幸福感と、業績と経営へのインパクトとの両立に拘って、あらゆる人事・組織の理論と実践を行き来しながら、組織という名の“生き物”と格闘してきた。フィールドを建設業界に移し、今日も人と組織の“幸福感”を追求中。
週末のライフワークである人事・組織理論の読書の傍らで徒然なるままに書き溜めたブログです。
建設業のリアルな現場でも実践し得られたことの共有や、人事・組織論の視点から、世の中の矛盾や不条理を鋭く、時に皮肉を交えて切り取ります。
業種を問わずさまざまな企業の中で「なんとなくモヤモヤしている」「組織の中で立ち止まっている」そんなあなたの思考に一石を投じるヒントがここにあるかもしれません。
2025年7月より当社代表取締役社長