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#032 与え続けてきたあなたへ——受け取る勇気で心の充足を
同じ根っこを持つ人たちへ
コミュニティや組織は、根源的な共通項をもつ人たちが集まるものだ。
キャリアカウンセリングを共に学ぶ仲間たちは、感受性が強く、人知れず困っている人の力になりたいと願う人ばかりだ。どこか自信がなく、しかしそれ以上に人に寄り添う。
企業の枠を越えた人事部門の心通じる仲間たちも同じだ。働くことで人生が幸せだと輝く社員を増やそうと、藁をもすがる思いで答え探しに余念がない人ばかりだ。
そんなかけがえのない仲間たちと会話を重ねるうちに、別の共通項が浮かび上がった。それは「与え続けている人たち」であり、同時に「どこか満たされない気持ちを抱えている人たち」であるということだ。
私利私欲で見返りを求めて与え、対価を得られずイラついている――といった人物像とは真逆なのに、言語化すると似た輪郭をまとう。自分が関わる人たちの幸せのために、全方位で関係する人々に与え続ける。しかし、自分が関わる人たちの幸せが理想の水準に届かない現実に不満足な気持ちが滲む。
新年にあたり、私は考えを置き直した。
もし、他者のために尽くしても成果が手元に腰を落とさないのならば、根本的に考え方を変える必要がある。
「あ、私のことだ」と感じた瞬間に、重心は心の充足へと動き始めている。
そして本記事の受け取り方はそれぞれ違ってイイ。
流れを動かす力の生態
与えることが得意な人は、目に見えない因子の扱いに長けている。場の温度を整え、関係に通路をつくり、偶然の芽を継続へ接ぎ木する。その結果、人や機会は自然に集まり、プロジェクトは途切れない。
同じ資質には、別の表情もある。呼びかけに誠実であるほど、自分のことが後回しになりやすい。流れは通り続けるが、中心に定着しにくい。ここで鍵になるのは、倫理の向きだ。
倫理は自己発からではなく他者が発する訴えに触発される。与える人は、心の声も含めてその呼びかけに応じ続けてきた人である。しかし応答の持続は、開きっぱなしの状態を招きもする。だからこそ、開くことと閉じることの切り替えが必要になる。切り替えを誤れば、善意の流量は増えるのに、手元の濃度は上がらない。
なぜ成果が定着しないのか
成果が定着しない理由は、能力や運の問題ではない。構造の問題である。与え続ける人が陥る構造は、次の三点だと思う。
1.「与える」が常に先行する習慣
頼まれたら応じる、困りごとに先回りする、摩擦を自分で引き受ける――この習慣が続くと、手元は常に開きっぱなしになる。巡ってきた成果は一度触れても、根を下ろす前に誰かへ渡っていく。
2.境界線の希薄化
「役に立つこと」を最優先し続けると、時間・体力・感情・報酬の境界が曖昧になる。境界が曖昧な場所に安心は定着しない。安心がなければ、成果は留まらない。負荷は増え、成果の濃度は薄まる。
3.「受け取ること」に理由を求める癖
自分への投資、正当な報酬、称賛や評価を素直に受け取るために過剰な理由、成果、犠牲、説明を付けたがる。理由が整わないうちは受け取らない。結果として、機会は巡っても自分の所有にならない。
これらは先天的な特性ではない。長年の役割の結果だ。人のために流れを動かしてきた人ほど、流れの中心に自分を置くことに不慣れであり、その不慣れが成果の定着を阻む。
役割の置き直しと転換点のサイン
必要なのは、「流れを動かす役割」から「流れの中で受け取る役割」への移行である。受け取ることは奪うことではない。循環を完成させる行為である。
自分の器(時間・空間・資源・感情の境界)を整え、心地よさやときめきを選択基準に置き直す。自分を削る働き方をやめ、判断と感性が正しく機能する労働へ移行する。
「風の時代の働き方改革」とでも言っておこう。与える前に、まず受け取りを設計する――順序を変えるだけで、流れは静かに反転する。
決定的な転換は音を立てない。サインは、日常のささやかな違和感として現れる。
役割への違和感
「自分がやらなくてもいいのでは」「今は休んでもいいのでは」という思いが、ふと胸に浮かぶ。説明はつかないが、正しさの匂いがする。これは役割の卒業通知である。
断っても関係が壊れない経験
無理に応じると噛み合わず、正直に「今はできない」と告げたとき、意外にも関係は保たれる。境界線を引いても大丈夫だと、現実が教えてくれる。
選択基準の微細な変化
安さ・遠慮・前例ではなく、持続可能性と心地よさで選ぶ瞬間が増える。短期の効率より長期の安定へ自然と視線が移る。成果も機会も、心地よさに集まる性質を持つ。
少しでも「残る」感覚
無駄を削っても苦しかった時期が終わり、少しでも「残る」ようになる。誰かのために使う前に、自分のために整えることが自然化する。これは成果があなたを避けなくなったサインである。
これらは取るに足らないように見えるが、重なったときに後戻りできない流れを生む。重要なのは、元の生き方には戻れないと気づいた自分を責めないことだ。それは失敗ではなく卒業である。
受け取ることは奪うことではない
誤解に先回りして答えておきたい。
受け取ることは利己的ではないか?
境界と約束が明確であれば、受け取りは利己ではなく、責任の定着である。受け取りを躊躇するほど、約束が曖昧になり、信義が摩耗する。
断ると、機会を逃さないか?
断ることで、機会の質は上がる。スコープを絞るほど、成果の濃度は上がる。濃度が上がると、次の機会は自然に増える。
評価や報酬の交渉は、人を傷つけないか?
傷つけるのは、曖昧なまま進めることだ。交渉は、合意の質を高める営みである。言葉で整えれば、関係はむしろ健全になる。
一定の自己犠牲は必要ではないか?
自己犠牲ではなく、仕組みと意思決定で濃度を上げる。個人の頑張りから、組織の約束へ。
「達成」を再定義する
これまでのビジネス環境から、我々は何かを「達成」することでしか、やり甲斐を感じられない体質になってはいないだろうか。例えば人事制度の設計は苦難の道のりで、導入は達成感を得るに相応しい。しかし、忘れてはいけない。何を達成するための施策だったのか。
経営や人事が成し遂げたいのは、持続可能な経営基盤であり、その礎となる社員が幸福と思える組織風土であり、「達成」という概念では表現し難いしろものなのだ。達成の喜びから、関係の厚みへ――定義の転換が求められている。
与えることをやめるのではなく、循環を完成させる
与え続けてきた人生は誇りである。それはあなたの人としての魅力そのものだ。通り過ぎてきた成果は失われたのではない。あなたが受け取る準備を整えるのを、静かに待っていただけだ。
あなたは今日、何をやめ、何を言葉にし、何を受け取りますか?
その一歩を選び直すのは、ほかの誰でもない——あなたである。
筆者紹介:風を読む人事家
自動車業界で、人事etc.~海外子会社CEO~人事担当役員を経て当社へ。人事・組織論の長年の実践知を注入し、「社員の幸福感」と「経営へのインパクト」との両立に挑戦中。
週末のライフワークである人事・組織理論の読書の傍らで徒然なるままに書き溜めたブログです。
建設業のリアルな現場での実践知の共有や、人事・組織論の視点から世の中の矛盾や不条理を鋭く、時に皮肉を交えて切り取ります。
業種を問わずさまざまな企業の中で「なんかモヤモヤしてる」「組織の中で立ち止まってる」そんなあなたの思考に一石を投じるヒントがここにあるかもしれません。
2025年7月より当社代表取締役社長
