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#042 ココで働くと決めたのは誰?——お坊さんの法話@新入社員研修とアドラーとの共通の教え

仕事に不満があると、
つい「会社のせい」「上司のせい」にしたくなる。
そう思う自分を、責める必要はない。

だが、その瞬間から、
人生が少しだけ止まってしまうことには、
あまり気づかれていない。

私は人事で採用・教育を担当していた頃、毎年、新入社員研修の付き添いで、地元の有名なお寺を訪れていた。
早朝から坐禅をするのと、お坊さんの法話を聞くことが恒例となっていた。

そこでのお坊さんの法話が、驚くほどシンプルで、そして厳しかった。

──「この会社で働くと決めたのは誰ですか?」
──「今日ココで働く、と決めているのは誰ですか?」

この言葉は、のちに私が学んだアドラー心理学の「今・ココ」そのものだった。
この記事では、新人研修で出会ったお坊さんの教えとアドラー心理学を重ねながら、
なぜ人は“人のせい”にすると不活性になるのか
そして “今・ココ”を引き受けるとはどういうことなのかを紐解いていく。

お坊さんが語った、「自由に選べる世界」という前提

お坊さんは、こんな前提から話を始めた。

現代のこの社会は、完全ではないが、
少なくとも 「自由に選べる社会」 だと。

辞めることもできる。
転職することもできる。
配置を変えてくれと懇願することもできる。

それでもなお、
今日も、この会社に来て、この席に座っている。

それは「させられている」のではなく、
“自分で選んでいる”という事実ではないか──
お坊さんは、そう問いかけた。

不満を抱えながら働くことも、
それ自体が、ひとつの「自らの選択」なのだと。

アドラー心理学が語る「今・ココ」

アドラー心理学では、人は 
過去によって決定される存在でも、
環境によって決定される存在でもない

とする。

原因論ではなく、目的論。

「上司や会社がこうだから動けない」のではなく、
実は心の奥底で、「動かないという選択を、いま自分がしている」
上司や会社の悪さ加減はそのための理由づけ。

この見方は、少し厳しい。
だが同時に、とても優しい

なぜなら、
いま・ここから、選び直す自由が残されている
ということでもあるからだ。

ハンドルを離して運転席に座る

私はよく、こう例える。

人のせいにしている状態は、
運転席に座ったまま、ハンドルから手を離しているようなものだ。

道が悪い。
天気が悪い。
前の車が遅い。

文句は言える。
だが、ハンドルを握らない限り、行き先は変わらない。

アドラーも、お坊さんも、
指していたのは同じ場所だった。

「今・ココの席に座っているなら、
ハンドルを握るか、
席を立つか、
どちらかを自分で選びなさい」

これは「我慢しろ」という話ではない

ここは、誤解されやすいところだ。

これは
「我慢しろ」という教えではない。
「逃げるな」という精神論でもない。

むしろ、正反対だ。

逃げる自由も含めて、
すべてが選択肢として開かれている世界
で、
いま自分が何を選んでいるかを自覚せよ、という話だ。

逃げてもいい。
辞めてもいい。
変えてもいい。

ただ、
「選んでいるという主体」は手放すなということ。

そして、自分が選んでいるという自覚を取り戻せたならば、今・ココに打ち込めということだ。

不活性が、人をいちばん苦しめる

私にも経験がある。
人は、
忙しさや理不尽そのものよりも、
「自分には選べない」と感じている状態に、最も苦しむ。
苦しかった・・・法話から約25年後、服従を黙示され自分には選べない世界、自分の意思を示したら爪弾きにされる世界から、人のせいにする前に脱出することになる。

人のせいにすると、一瞬は楽になる。
だが同時に、
心はその場で止まってしまう。
限られた貴重な人生の時間を、主体を失ったまま浪費してしまう。

お坊さんが言った
「他人や環境のせいにするのはおかしい」という言葉は、
責めではなく、人を信じる前提だったのだと思う。

引き受けた瞬間から、人生は静かに動き出す

過去は変えられない。
未来は、まだ来ていない。

だが、
いま・この瞬間の関わり方だけは、選び直せる。

お坊さんとアドラーが、
違う言葉で、同じ場所を指していた理由も、そこにある。

今日ここに立っている自分を、
誰のせいにもせず、
そっと引き受けてみる。

それだけで、
人生はまた、静かに動き出す。

筆者紹介:風を読む人事家
自動車業界で、人事etc.~海外子会社CEO~人事担当役員を経て当社へ。人事・組織論の長年の実践知を注入し、「社員の幸福感」と「経営へのインパクト」との両立に挑戦中。
週末のライフワークである人事・組織理論の読書の傍らで徒然なるままに書き溜めたブログです。
建設業のリアルな現場での実践知の共有や、人事・組織論の視点から世の中の矛盾や不条理を鋭く、時に皮肉を交えて切り取ります。
業種を問わずさまざまな企業の中で「なんかモヤモヤしてる」「組織の中で立ち止まってる」そんなあなたの思考に一石を投じるヒントがここにあるかもしれません。
2025年7月より当社代表取締役社長