お役立ち情報 / お知らせ
- 浜松の解体業者 丸友開発 トップ
- お役立ち情報 / お知らせ
- サイトマップ
#031 今年私は強くなった——見えないものとは戦わない強さ
今年、私が手に入れたもの
今年を振り返ると、私はある「強さ」を手に入れた。それはマッチョな筋力のような外側の膨張ではない。むしろ、透明で静かで、誰の目にも映らない内面に試金石をひとつずつ置いてきた感覚である。私は「見えないものと戦わない」という新しい強さを手に入れた。これは諦めではなく、尊厳を守る戦略である。
見えないものとは何か。空気、バイアス、他人の心、他人都合の推測、全体の圧力、未来への不安——輪郭を持たず、掴めないものだ。これらと戦うことは、終わりのない消耗戦である。
私が戦うことをやめ、代わりに選んだのは、自分の軸に立ち、関係性を整え、心の“間”を大切にすることだ。強さとは、勝ち負けの物語から降りる勇気であり、弱さを分かち合う愛である。
今年一年、私は執筆を通してその軸を研ぎ澄ませてきた。本記事では、今年の執筆でクリアとなった気づきが、どのように「見えないものとは戦わない強さ」へと結晶したのかを辿る。
空気に呑まれず、立ち止まる勇気(#003, #019)
組織には目に見えない気圧がある。常識、慣習、期待、沈黙——それらは風のように人を押し流す。
私は「空気」を解体する視点を手に入れた(#003)。空気は悪でも善でもない。扱い方次第のものである。ここで役立ったのが、バイアスの功罪を見極める眼差しだ。バイアスは意思決定を素早くする知的ショートカットである一方、気づかぬうちに判断を歪める現代の呪いにもなる(#019)。
バイアスに気づいた瞬間に立ち止まる勇気を身に着けた。正しいか間違いかを即断するのではなく、呼吸を整え、考える“間”をつくる。
意思決定の速度が求められる場面ほど、立ち止まる習慣が尊厳を守り人を守る。自由は気づきから生まれる。
正義を単色化しない——弱い者を守る視点(#008, #020)
「正義」は一枚岩ではない。文脈を持ち、文化を背負い、関係性に照らされるたび別の顔を見せる。
忠臣蔵の物語を通して、「正義」の中に複数の基準が共存するという当たり前の難しさを学んだ(#008)。マルチスタンダードを理解せずに正義を振りかざせば、人の尊厳を損なう。
今年、私は「正義の本質」をこう定義した。正義とは、関係性の中で最も弱い者の尊厳が守られている状態であると。経営や人事の仕事は、この状態を設計し、運用し、見失いかけたときに修復する営みだ。私は判断のたびに弱い者の声へ耳を傾けることを自分の規律とした。正義は賛否ではなく、尊厳を守る質で測るものだと胸に刻んだ。
「頑張る」を見直し、本質に生きる幸せ(#011)
「頑張る」は美徳だ。しかし、目的が空洞化した努力は、現代の過労である。私は、頑張ること自体ではなく、何のために頑張るのかを問い直した(#011)。
本質に立ち返れば、努力は短く、深く、静かになる。人事の世界では、制度や施策の“量”で何かを示したくなる誘惑がある。けれど、本質はいつも人の体温に宿る。
私は今年、施策の“増築”よりも、会話の“増幅”に力を注いだ。短い対話が、長い報告書よりも強いことがある。人は言葉の量ではなく、自分が触れられたと感じた瞬間に変わる。幸福は成果の総量ではなく、本質に触れている時間の長さだと知った。
逃げるは戦略——距離を取る勇気(#015, #020, #023)
嘘、大げさ、作り話、不徳……本質から遠ざけるものは、たいてい魅力的な衣を纏っている。私は、距離を取る勇気を手に入れた(#015)。
「逃げる」は敗北ではない。自分の尊厳を守る戦略である。
人事の現場でも距離の設計は重要だ。好ましくない影響源から意図的に距離を置ける構造を用意すること。異動、プロジェクト再編、心理的安全の再構築。私は今年、「害から離れる」決断を何度かした。関係を断つのではない。それは私自身の心を守り、組織の健全性を守るための決断だった。縁を断つことは、未来に縁をつなぐためでもある。
心は関係性の中にある(#016)
「心はどこにある?」——この問いに私はこう答える。心は、関係性の中に生まれ、関係性の中で育つ。
人の心は個人の内側に閉じているわけではない。関係の質により、心は温度を変え、形を変える(#016)。経営や人事の仕事は、人の“内側”を直接変えることではない。関係の場を設計することだ。
今年、私は4つの会議体の新設と複数の既存会議体全ての見直しを行った。会議を悪とする人種には悪手と言われるだろうが、プロたちの英知を結集しつつ、雑談の回路を増やし、決断の前の事実集めの時間を意図的に長くした。奇妙なことに、それだけでお互いを認め合い、対立が減り、誤解が減り、涙が減った。関係性の質が上がれば、心は自然と整う。見えないものに触れるとは、場の質を変えることだったのだ。
アンチ全体主義——“個”を尊重する覚悟(#017)
「全体主義」は、いつも善意の仮面を被ってやってくる。効率、統一、合理、最適化——これらは欠かせない価値だが、個の尊厳を踏み越えた瞬間に暴力へ転じる(#017)。
私は今年、少数派を守る規律を強めた。意思決定の場で「声の大きさ」ではなく「根拠の深さ」で評価し、同調圧力の兆候が見えたら、意図的に反対意見を招く。人事にとって個の尊重は理念ではなく、運用と設計の細部である。
全体のために個を削るのではなく、個が生きるから全体が強くなる。私はそれを信じ、今年も小さな反抗を続けた。反抗とは尊重のための抵抗だ。
自分らしく生きる——幸せの定義を更新する(#021, #023)
「幸せとは、自分らしく生きること」——このシンプルさは、時に難解である(#021)。
自分らしさは固定されたラベルではない。選び直し続ける勇気である。私は今年、肩書きや役割の重さから距離を取り、“いまの自分”に合う規律を再設計した。
人事の観点で言えば、キャリアは階段よりも地図に近い。人は上に行くのではなく、自分の場所に行く(#023)。
私は、社内外問わず大切な仲間たちが“上”を目指すことよりも、“自分の場所”を見つけることを応援した。その結果、真の生産性は上がり、何より笑顔の質が変わった。幸せは達成の総量ではなく、自分で選んだ実感である。
「たすけて」を差し出す——弱さの共有地(#025)
「わからない」「たすけて」——この言葉は、今年のハイライトだ(#025)。
人は、強がりの鎧を着ると事実が入ってこなくなる。私はあえて未熟さをさらけ出したというより、そもそも建設業は門外漢である謙虚さと周囲のプロたちへの尊敬を自分の中心に置いた。すると、仲間たちが有効な事実を集め快く提供してくれた。ネガティブ・ケイパビリティとは、答えの出ない問いに耐える力である。人事は正解の早押しではなく、不確実性の共同耐久だ。
弱さは場の重力を変える。人は、助けを求める人を助けるように進化しているのだと思う。
“問い”が偶然をチャンスに変える——人生の躍動(#028)
“問い”があると、出会いが変わる。人が集まり、情報が寄り、偶然が意味を帯びる。経営や人事の現場でも、問いがない施策はたいてい、現実の微細な変化に盲目だ。
私の問いはこうである。
・この人の尊厳は、どこで守られているか?
・この場の重力は、誰に不利に働いているか?
・この仕組みは、本質に触れているか、それとも体裁を取り繕っているか?
問いは羅針盤だ。答えは地図上の点にすぎない。問いを持ち続ければ、人生は躍動し、仕事は楽しくなる。私はそれを今年、何度も実感した。
見えないものとは戦わない強さ
見えないもの——空気、バイアス、他人の心、全体の圧力、将来の不安。
私は、これらと戦わないことを選んだ。戦わないとは無視ではない。見分け、距離を取り、場を設計し、問いを携え、関係性を育てることである。
強さとは、自分の軸に立ち続ける持久力。そして、弱さを分かち合う勇気と愛が、組織を前に進める。
この強さは、来年も人と組織の尊厳を守るために使おうと思う。
あなたは、戦わなくていいものを、見分けていますか?
あなたの組織に、心の“間”はありますか?
筆者紹介:風を読む人事家
自動車業界で、人事etc.~海外子会社CEO~人事担当役員を経て当社へ。人事・組織論の長年の実践知を注入し、「社員の幸福感」と「経営へのインパクト」との両立に挑戦中。
週末のライフワークである人事・組織理論の読書の傍らで徒然なるままに書き溜めたブログです。
建設業のリアルな現場での実践知の共有や、人事・組織論の視点から世の中の矛盾や不条理を鋭く、時に皮肉を交えて切り取ります。
業種を問わずさまざまな企業の中で「なんかモヤモヤしてる」「組織の中で立ち止まってる」そんなあなたの思考に一石を投じるヒントがここにあるかもしれません。
2025年7月より当社代表取締役社長
